ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「あれって、前に見せてくれた写真の......」
――パンッ
財布から慌てて出した1000円札。零士さんが言いかけた言葉も遮り、勢い余ってカウンターに叩きつけた。
「あの、お騒がせしてすみませんでした。」
「いいよ、今日お金は......」
「千秋さんには、絶対言わないでください。」
鞄を抱え、黙り込む零士さんに頭を下げた。顔を上げ、訴えるように彼の目を見つめると、そのうちにこの場にいる気まずさを覚えた。
「晴日っ!」
慌てて帰ろうとした時、その足を止めようと叫ぶ声が聞こえた。
「桜さん、晴日がいなくなってから寝込んでる。連絡してあげてほしい。」
瞼の裏に、ベッドで横たわる桜の姿が見えた。
矢島さんの言葉に立ち止まった私は、思わず目を瞑っていた。今すぐにでも手を握ってあげたい。大丈夫だと声をかけてあげたい。それができないのが、不甲斐ない。
私は何も言わず、その場を立ち去った。
そこから、どうやって帰ったかはあまり覚えていない。気づいたらリビングで、ボーッと一点を見つめて座っていた。