ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

「零士さんのところ。」

「そっか。」

 でも、決して会話が弾むわけじゃない。だけど、なぜだろう。この空気感が、なぜか落ち着くようになっていた。

 実家の......あの家にいた時は、どこに行っていたかなんて聞かれたことがなかった。心配なんて、されたことがなかった。

 家族が普通にする会話は、あの家にはなかったから。


「はいっ。」

 本当に一瞬のこと。

 一人暮らしが長く、料理は得意だと言っていた千秋さん。ちょっとの会話とボーッと考え込んでいる間に、お皿が運ばれてきた。

 作ってくれたのは、雑炊。ふんわりとカニの香りがした。


「これなら食べられるんじゃない?」

 暖かい匂いがした。

 全てお見通しとでも言うように、私の食欲のなさを察してくれているようだった。


「豪華な雑炊っ。」

「カニの缶詰。貰い物だよ。」

 思わず顔が綻びながら、馬鹿みたいに幸せを感じた。夢の中にいるような感覚。同情と分かっていながらも、それを愛情だと勘違いしたくなる。

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