ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

「聞かないんですか?何かあったのかって。」

 食事を食べ終えた私たちは、お互い部屋へ戻ろうとドアノブに手をかける。その直前で、誰かに引き止められたかのように、手が止まって振り返った。


「聞いてほしくなさそうな顔してたけど、違った?」

 そんな私の問いかけに、表情ひとつ変えない彼。

「まあ、そうなんですけど.......」

「できる限り、プライベートには踏み込まないから。安心して。」

 すると、突然ドーンと大きな音を立てて、目の前にシャッターが下ろされた。それも、鉄のように重い重いシャッター。


「おやすみなさい。」

「ん、おやすみ。」

 私は、反応することもできず、部屋へ戻った。

 少し近づけたと思ったら、この距離。まだまだ全然、彼の心の中までは遠かった。


「なにやってるんだ、私は......」

 ベッドにダイブし、言ったことを後悔した。枕に顔を埋めながら、幸せが逃げそうなほどの大きなため息をつく。


 今日は優しかったから、心配してくれているのかと少しだけ期待してしまった。

 聞かれるのも答えるのも嫌だと思っていたはずなのに、なんであんなことを言ったんだろう。心配して欲しいとさえ思った。

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