ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

 優しいのはほんの気まぐれ。そんな淡い期待はもつだけ無駄。愛のない結婚がしたくて私と結婚したのだから、そんなのあり得ないって分かっていたはずなのに......。

 余計なことを言ってしまった。


 天井を見上げ、ベッドいっぱいに手を広げた。

 おもむろにスマートフォンを手に取ると、顔の上で明かりをつける。ボーッと見つめるのは、トーク画面の1番上に表示されていた桜の名前だ。

「どうしよう。」

 ため息をつき、下ろした腕で目を覆う。私は、真っ暗な闇の中にいた。


――――――――――――――――


 電話をかけた。

「桜......」

 それは、バーを出てすぐのこと。矢島さんに言われて、すぐのことだった。

「桜?」

 しかし、電話は繋がっているのに、声が聞こえない。何度か呼びかけたのに、答えてくれない。

 不審に思いながら、何度も桜の名前を呼び続けていた。



「もしもし。」

 その時、電話に出た声は、桜のものではなかった。でも、それが誰の声なのかはすぐに分かる。

「お母さん?」

 思わず、道のど真ん中で立ち止まっていた。

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