ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「そんなわけで、悪い。礼央を預かってくれ。」
双葉は、礼央と家の鍵を置いて、あっという間に出かけていってしまった。
まさか、こんな展開になるとは思いもしなかった。
困った表情を浮かべる私とは反対に、目の前にいるこの子は凄く嬉しそうしている。にんまりと笑いながら、私の膝に乗ってきて座り込んだ。
「礼央ー、どうするよー。」
嬉しそうにしてくれるのは可愛いけれど、今は困ったという感情の方が勝る。小さな体に軽くもたれかかりながら、私は助けを求めていた。
預かるのはいいとしても、双葉の家で何をしていよう。正直、いくら親友の家だからって、人の家で好き勝手はできないし。かと言って、公園に遊びにいって何かあったら不安。
双葉が帰ってくるまでの間、どう過ごそうかとそればかりが頭の中を駆け巡った。
「なー、晴日の家行こーよ。」
すると、突然の提案。
「おおっ。」
一瞬、良い考えだと思った。でも、すぐに頭に浮かんだのは千秋さんの顔。仕事でいないからといって、勝手に家に入れていいものなのだろうかと、ふと思った。
「あ、いやー。うちはなー。」
「なんでだよー!いいじゃんかー!」
でも、純粋無垢な子供の瞳には、勝てなかった。バタバタと足を揺らす駄々に負けて、私は礼央を連れて帰ることにした。