ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
双葉には、一応LINEを入れた。
礼央と二人っきりになるのは初めてで、一歩外に出るだけでも緊張する。今にも走り出してしまいそうな小さな手を、強く握った。
そして電車を乗り継ぎ、なんとかマンションへ辿り着くと、ホッと安堵する。
「うおー!すげぇー!!」
そうしてエレベーターに乗り、30階。降りたところで、まず大興奮を見せた。
扉が開いた瞬間、飛び出すように走っていった礼央。窓にぺったりと張り付き、キョロキョロと外を見渡していた。
「晴日!俺の家どっち!」
「んー、あっちかなー?」
「えー!全然見えない!すげー!!」
可愛らしいプロポーズをしてきたり、花をプレゼントしてくれたり。いつもちょっと大人ぶって、ませた子供だと思っていた。
けれど、こういう姿を見ると、やっぱりまだ小学生なんだなと微笑ましくなる。
「ほら、そろそろお家入ろう?」
「えぇー。」
「お腹すいたでしょ?なんか簡単に食べよーよ。」
きっと、千秋さんが帰ってくるのは遅い時間。双葉もそれまでには帰ってくるだろうとふみ、少しぐらいはと安易な考えでいた。
興奮する礼央を連れ、部屋の鍵を開ける。そしてドアを引き、話しながら入っていった。