恋する乙女はまっしぐら～この恋成就させていただきます！～
最近突き放しきれなくなり、少しずつ近づいてしまった距離をどうにかしなければと思っていた矢先、ばったり休憩で食事をとろうと食堂に向かう途中で医院長に出くわした。

「お疲れ様です」

立ち止まって会釈した俺に

「あぁ、お疲れ様」

と通り過ぎかけた医院長は

「あぁ、そうだ沖田先生」

と思い出したように立ち止まった。

「先生、確か金曜日はお休みだったよね？」

にっこり笑う医院長に嫌な汗が背中を流れた。
すでに俺のシフトを把握している時点で嫌な予感しかしない。

「そんなに警戒しないでくれよ沖田先生。
先生の事情も十分わかってはいるつもりだよ。
だからこそどうにかしたいと思っているし、そんなに頑なに拒絶しないで私は君に幸せになってもらいたいんだよ」

医院長の言葉に金曜日に何があるのか理解した。

「もうわかっているみたいだが、金曜日の夜プリンスホテルで懇親会がある。

君の評判が良すぎてね。前々から一度でいいから参加させてくれって声が多いんだよ。
頼むよ、今回だけ顔を出してくれないか？」

手を合わせて頼んでくる医院長は、思い出したようにその手を叩き話を付け足した。

「あぁ、そうそう。
君に大切な女性がいるのなら一緒に同伴して参加してくれてもかまわないよ」

チラリと頭をよぎった彼女の顔を振り払い、どう参加を断ろうか言葉に詰まっていた俺は、いつもならすぐに気がつく彼女の気配に、腕を捕まれはじめて気がついたのだ。

気がつけば俺はどうにもならないこの状況を、納めるいい代案など思い付くはずもなく、彼女が言うがまま一緒に懇親会に参加することになってしまった。
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