恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
お風呂から上がり、ソワソワウキウキした気持ちは落ち着くどころか膨れ上がるばかりで一向に落ち着かない。


院外で先生に会うなんて初めてだし、恋人なんたからその距離感は近いはずだ。

「どっどうしよう…。うわっ!!」

静かな部屋に鳴り出した携帯にびっくりしてとびあがった。
先生かと思って深呼吸して携帯を手に取れば画面には"実家"と表示されていた。

「…もしもし」
恐る恐る出た電話に聞こえてきた声に小さく息を吐き出した。

「あぁ、真琴、元気にしてる?」

今は話をしたくない相手の声に電話だというのに体が強ばり身構える。

「うん、元気にしてるよお母さん。そっちはみんなかわりない?」

ゴールデンウィークに夏に暮れ、決まって母から帰ってきて実家の手伝いができないかと確認電話がかかってくる。

私の仕事に世間の休日なんて関係ないし休みがとれても就職してからこの8年、1度も実家の山形には帰っていない。

案の定母は

「今年の夏も帰ってこれないの?」

と訪ねてきた。

「うん、ごめんね。忙しくて帰れない」

「そう。ふぅ。まったく何年も顔を見せないで、あんたの顔忘れちゃったわよ。でもまぁいいわ。約束まで半年だものね。年末にはちゃんと退職して帰ってくるわよね?いまだに恋人を連れて帰ってこないんだからちゃんと約束守るのよ」

「わっわかってる!もう仕事に行く時間だから切るよ!じゃあね」

電話を切ってベッドにごろんと横になった。

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