恋する乙女はまっしぐら～この恋成就させていただきます！～

「なんだ？その反抗的な目は。
自分の非を素直に認めろよ。
なんなら本社にクレーム入れていいんだぜ？」

今日はいつもよりしつこく絡まれ、ざわついていた周囲の学生たちも何事かとこちらに注目していつのまにか辺りは静まり返っていた。

「…大変、申し訳ありませんでした。すぐに作り直してお席までお持ち致します。申し訳…」

悔しい気持ちを押さえ込んで頭を下げたその時。
　
「悪くないなら簡単に謝るなよ。毅然とした態度をとらないとこういうヤツはますます付け上がる」

「えっ…？」

不意に聞こえてきた声に顔を上げると、冷たい視線を男に向けている長身の学生が立っていた。

「お前さぁ、よくこの女に絡んでるの見かけるけどいい加減にガキみたいなことやめたらどうだ？
毎回大声で騒ぎやがって耳障りで飯が不味くなる」

そう言うと手にしていたどんぶりがのったトレーを学生の前に置いた。

「ほら、お望みの味噌ラーメンだ。俺が今頼んだアツアツだ。そんなに食いたいならお前にやるよ。

まぁ急に人が頼んだものくいたくなるときあるよな？まぁお前のすぐ後ろにいた俺にも　"たぬきうどん"　ってはっきり聞こえたけどな」

ふんっと鼻で笑いながらそう言い放った男に、私に文句をつけていた学生は突然割り込んできた男を凄い形相で睨み付け、みるみる顔を真っ赤にして乱暴に胸ぐらに掴みかかったが、男はすぐにその手を払いのけた。

「なんだ？俺とやるのか？お前１年だよな。
せっかくだからお前の顔、特別によおぉぉく覚えておいてやるよ。
あいにく俺は記憶力も耳もいい。

研修医で来たらたっぷり可愛がってやるから楽しみにしておけ」

真っ赤だった学生の顔はみるみる青ざめ体が小刻みに震えだす。

「…おっ沖田…」

「あぁっ？先輩を呼び捨てかよ、佐伯」

「ひっ」

いきなり名前を呼ばれ、佐伯と名前を呼ばれた学生はビクッと大きく跳ね上がると、体を硬直させて

「すっすみません沖田さん。めっめっそうもございませんっ！
沖田さんとやりあうつもりなんてありません！お騒がせしてすみませんでした」

そこで言葉を切ると、忌々しげに私を睨みながら

「今まで難癖つけて悪かった」

そうぼそりと呟き、うどんののったトレーを持ち逃げるように食堂の奥へ走って行った。