恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
「勘違いしないでくれよ。
私はいつだって君の、君たちの味方だよ。

それは今まで通りかわらない。

私も自分の大事な職員二人から恨まれたくなんてないからね。

むしろ守るつもりでいるんだ。
だから沖田先生、しっかり君も彼女を守り絶対にその手を離すんじゃないぞ」

ピリッとしていた空気を破るように、医院長はいつもの穏やかな笑みを浮かべ、優しく私に話しかけてきた。

「本多さん、ちょっと気難しい男だが彼のことを頼んだよ。
私にとって息子みたいに可愛がって育てている大事なうちの医師だからね。

今さらどこかにやるつもりもないのでね。彼のことは頼んだよ、本多さん」

先程からの意味深な二人のやりとりに、私は医院長の言葉に黙ったまま頷いた。

「それじゃあ私はいくから沖田先生、君と話したがっている若い医師たちがいるからその相手だけは宜しく頼むよ。

同性の医師たちの相手なら君の可愛い恋人もへそを曲げたりはしないだろう?」


「それは…。
私の機嫌が悪くなります。
一緒にいる真琴に他の男が話しかけたりしたら俺のへそが曲がりますよ。

こんな可愛い彼女をもう人目に晒したくはないのでね。

医院長、まだきたばかりですが義理は果たせましたよね?

私たちはもう帰ります。たまの休みなんだ。
二人でゆっくり過ごしたい」

「…っ!」

妖艶に微笑み、腰に腕を回して私を引き寄せ、熱のこもった瞳で私をじっと見つめる先生に全身がかあぁぁっと熱くなる。

これは演技だってわかっているのに…。

勘違いする私の脳は、全身をすごいスピードで駆け巡る血液で体温を急上昇させる。
ぎゅうっと締め付けられて高鳴る胸の鼓動に。

現実なのか夢なのかがわからない。

夢ならずっと覚めないで…。

あぁ、私はあなたの言葉にその表情に、どんどん恋に落ちていき、心はあなただけに縛られる。

ねぇ先生、その言葉には少しでも真実があるのでしょうか。

わずかでも希望があるのなら、私は何があろうとずっとあなただけを想い続けていたい。

たとえこの想いが実ることがなかったとしても、私はこの気持ちを消し去ることなどしたくない。
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