恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
(誰だろうこの人…。
一瞬で好意的だった雰囲気から敵意むき出しの目で見られてる)

だけどすぐにまた目の前の男性は、先程の鋭い眼差しなど気のせいだと思うくらいまとう空気を一変させてもとのやわらかな笑みを浮かべ話しかけてきた。

「あぁ、失礼。まずは自分から名乗るべきだね。
私は高宮尊。直紀の兄で高宮総合病院の医院長をしています。兄といっても私たちは母親が違う兄弟でね。父は…」

「僕の恋人です!」
遮るように先生が口を挟んだ。

(えぇっっ!!ちょっとまって!高宮総合病院って都内屈指の大病院で…。そのもと医院長って言えば…)

沖田先生のお兄さんの登場と、そのお父さんが都知事の高宮忠勝だと瞬時に理解した私の顔色がさっとかわる。

「チッ」
と軽い舌打ちが頭上から聞こえ、再び私はぐいっと先生に引き寄せられた。

「僕の恋人です、尊さん」

力強く腰に回された腕にはっと我に返った私は、気を取り直して深呼吸し

「はじめまして、本多真琴と申します」
と名乗り真っ直ぐにお兄さんを見つめ会釈した。

「はじめましてホンダさん。
あぁ、すみません、私は"ホンダ"という名前に聞き覚えがないんですが、僕の記憶違いかもしれないがどこかの教授か病院関係者か議員のお嬢様ですか?

それとも…。

こんな可愛らしい女医さんが晒名総合病院にいたのかな?」

とくすりと笑った。

(私…歓迎されてないんだ…)

だけど沖田先生は私のことをお兄さんに今ちゃんと"恋人"って紹介してくれた。

だから私は何があっても背筋を伸ばして下なんか向いちゃいけないんだ。

何があっても誰であっても私はもう絶対に怯まない!
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