恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
"半年"

その言葉の意味に、心当たりがある俺は、思わず足を止めてしまい内心"しまった" と後悔して舌打ちした。

菊池はすぐに俺に顔を近づけると

「半年後に俺がもらうよ?
いいよね」

とクスクス笑った。

「だってさ、二人は半年間だけ "恋人ごっこ" するんだよね。

だから半年後には、彼女はきっぱり沖田をようやく諦めてくれるし、これで沖田ももう長年のつきまといから解放される。

それに沖田は独身主義だよね。

今まで何度も彼女をふってきたんだ。
今さら情に流されて本気になんてならないよね?」

菊池の言葉に、動揺を悟られないよう無表情のまま正面からその目を真っ直ぐに見据えた。

菊池は肩をすくめてペロッと舌をだすと

「そんな怖い顔するなよ。
わかってるよ。
もちろん誰にもいいやしないさ。
二人が偽の恋人なんてね」

コイツっっ!!

なんで知ってるんだ!?

ゴクンと思わず呑み込んでしまったツバが、喉仏を大きく上下させた。

「まぁ半年は目をつぶるさ。
しっかり半年後にふってくれればいいよ。

傷心につけこんで今度こそ俺のものにするからさ。
頼んだよ、沖田」

ポンっと俺の肩を叩いて医局から出て行く菊池の後ろ姿を、その言葉の真意を探りたくて、俺は睨むように黙って見つめていた。
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