恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
菊池が真琴を…?

医局から出かけたが、すぐに引き返して自席に戻り勢いよく腰を下ろした。

菊池孝臣(きくちたかおみ)

俺と同い年で3年前に晒名総合病院の外科医として勤務しだした同僚だ。

人懐っこい笑顔は全ての人を魅了し、人タラシな笑顔と性格は俺とは真逆に位置していて、その真っ直ぐで素直な性格は、羨ましくもあり鬱陶しい存在の男でもある。 


いつも俺にまとわりつき、素直で真っ直ぐではあるがいまひとつ心が読めない。

俺のことを親友と言い回り、しつこく誘われ渋々一緒に飯に行ったり飲みに行ったりたまにするが、俺も自身のことは話しはしないがおしゃべりな男のくせにアイツもまた自分のことは語らない。


変なところで俺をライバル視して競ってみたりもするし、他の同僚たちより俺の一番近い位置にいる奴ではあるがへらへらニコニコしてはいるが実のところよくわからないつかみどころのない奴なのだ。

混乱している頭を落ち着かせるために、右手で髪をかきあげながら天井を見上げ目をとじてゆっくり息をはきだし頭の中を整理する。


まずは…


菊池に俺たちが偽の恋人なことがバレている。

半年という期限まで知られていること、半年で俺が落ちなければ彼女が俺を諦めること。

きっとアイツは俺たちの会話を聞いていたのだろう。

このことを彼女に伝える…か…?

いや、黙っていよう。

半年後に菊池を選ぶか選ばないかは彼女が決めることだし、アイツがどう出るかわからない今、菊池について真琴に教えたくもないしアイツの話題をだしたくない。


二人が仲良く笑顔で寄り添う姿が一瞬頭に浮かび上がり、腹の中が急にムカムカしてきて思わず

「くそっっ!」

と声がでてしまい、慌てて大きく深呼吸して冷えきったデスクにあった飲みかけのコーヒーを一気に飲み干した。
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