恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
半年後、真琴が誰と付き合おうが俺にはもう関係ないことだし、そもそも幸せになって笑顔でいてくれることが俺が望む未来だったはずだ。

なのに…。


このムカつきは一体なんだ?

隣に寄り添う男が具体化しだしたら…あぁそうか。
ひとつの言葉が頭に浮かんだ。



『嫉妬』


そうだ、嫉妬だなこれは。


バカだな、はじめから半年後には別れるつもりだったんだろ?


俺みたいな男とこの先一緒にいても幸せになどなれやしない。

母親がどれほど苦労したのか忘れた訳じゃないだろ?

あぁ、いいじゃないか、菊池で。

いまひとつ読めない奴だが、患者からも医師や看護師たちからの信頼も厚く人望もあり、みんなに好かれている奴だ。

なにより俺と違い笑顔が絶えないし、優しい男だし、泣かすことなどないだろう。

きっと、笑顔でいてくれるはずだ。

悩むことも迷う必要もない。

この半年で彼女に嫌われ愛想をつかれればいい。

「ははっ…」

渇いた笑いが口から漏れる。

あぁそうだ。
何も無理に嫌われるように振る舞う必要なんてないのだ。

面白みのない冷たい男と付き合ってみれば百年の恋も一瞬で覚めるだろう。

そんな考えに到達してモヤモヤムカムカしていた腹の中は急速に冷え冷えして、一気に飲み干したコーヒーのせいだと無理矢理思い込み、カルテを手にして仕事に頭を切り替え医局を後にした。
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