恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
翌日、出勤するとあちこちから声をかけられてこの騒ぎは何なのかと驚いた。


昨日会った沖田先生はとくに何も言っていなかったし、訳がわからず仲良しの外科の看護師さんを捕まえると、こっそり昨日の出来事を教えてくれた。

沖田先生がはっきりと外科の医局で『恋人宣言』したものだから、院内に一瞬でその話が広がり、すっかり祝福ムードで昨日1日先生はみんなから冷やかされて、自分で宣言したくせに、煩わしそうに1日顔をしかめていたと。

「えぇっっ!!」

いや、いやいやちょっと待ってよ!!

私もその先生がみんなの前でした『恋人宣言』とやらを聞きたいし、そのときの先生の顔が見たかったんだけど!!


「だけどね、みんながいくら冷やかしてもいつも以上に眉間にしわをよせてるだけなんだよねぇ。
全然表情を崩さないんだよ!
あの鉄仮面ってば!!
でも…二人のときはでれて甘い言葉囁いたりするんでしょ」

ニヤニヤしながら顔を覗き込まれて

「えっ…」

と私の顔がたちまち真っ赤になる。

「ふーん、残念。彼女限定なんだ。見たかったなぁ、鉄仮面のでれ顔」

いや…違います…。
私だって先生のそんな顔みたいですよ。
私が無理を言って付き合ってるわけで、だから甘い言葉など囁いてくれるはずなどなく。


私が思わず赤くなってしまったのは、そんなでれて、私のことを『好きだ』と囁く先生を想像してしまったからなのだ。
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