恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
「おはようございまーす」

元気よく出勤した私は、瞬く間にみんなに取り囲まれて質問攻めにあった。

だけど…。

半年間の偽の恋人だなんて真実を話せるはずもなくて、用意していた筋書きをニコニコしながらみんなに話した。


「私があんまりしつこいから先生がついに折れてとりあえず付き合ってくれることになったんです。

とりあえず、とりあえずだけどでも!!

あの、難攻不落の沖田先生のふところまで入り込めればこっちのもの。

ふふふっ。あとは婚姻届にパパっとサインしてもらっちゃえば念願の沖田先生の妻の座を獲得ぅ!

あー、ほんとに長かった。ここまでくるのに苦節7年。

本多真琴、諦めずによく頑張ったと自分で自分を誉めてあげたい!」

両手で自分自身を抱きしめると、あちこちから伸びてきた手に叩かれた。
そしてパートのおばちゃんたちや、先輩や後輩たちが口々に

「よく頑張った!」 「沖田真琴までもうひと息!」

と私を祝福して応援する声がかけられる。


うん、真実はどうであれ頑張ったよね?私。

今、誰よりも沖田先生の側にいれるのは私なんだ。

「私は、沖田真琴に必ずなる!!」

拳を高々と上にあげると

「頑張れー」

とおばちゃんたちの声援が沸き上がった。盛り上がっている栄養科フロアーに


「…誰が簡単にサインするかよ」

と冷やかな声が割って入り、その声に一瞬で静まり返ったフロアーは声の主に目を向けた。
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