恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
何かあったのだろうか?
ざわつく心臓のあたりの服をぎゅっと掴んで恐る恐る電話にでた。

「もしもし、本多です。おはようございます」

「あぁ、沖田だ。朝早くに悪いな」
大好きな人の柔らかな声に、胸の鼓動が速さをます。

「いえ、どうかしましたか?」

「あぁ、いやぁ…」
私の問いかけに歯切れの悪い返答をして黙りこんだ先生に、もしやと頭をよぎった考えを口にした。

「えぇっと、もしかして今日、行けなくなりましたか?」

「‥すまない‥」

ぼそっと呟かれた言葉に、がっくりと肩を落とし電話を耳に当てたまま力なくベッドに寝転んだ。

「仕事‥ですよね。それじゃあしかたな‥」

「あぁ、いやっ違う!」
慌てたように私の言葉を遮ると先生は急に早口で話しだした。

「悪い。昨夜急患でオペが入ってもう少し術後の経過を見てから帰りたいんだ。だから悪いんだが一緒には行けない」

「えっ?」

「俺はあとから行くから先に虎太郎と行ってくれないか?
あーっ‥虎太郎っていうのは医院長の息子のことだ。俺にとって弟みたいなやつで虎太郎には連絡して真琴を一緒に連れて行くように頼んである。七時半に真琴のマンションの前に車で迎えに行くからよろしくな」

「え!?ちょっ、沖田先生!」

そのまま電話は一方的に切られていて、私は初対面の医院長の息子と二人で出かけることに決まっていた。

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