恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~

偽りの恋人(沖田)

(くそっ!なんでこんなことになってるんだよ)

いつも以上に俺はぶっきらぼうで無愛想、さらに不機嫌オーラを全身から吹き出していた。
面と向かって話しかけてくる奴など一人もいないが、出勤してから外科の医局にたどり着くまで、生暖かな俺を見る周りの眼差しが何を意味しているのか一瞬で理解した。

もう昨夜のことがたった一晩ですでに院内に広まったのかよ。

(チッ)

思い当たる男の顔を思い浮かべながら、舌打ちして医局に足を踏み入れると、案の定


「おっはよー沖田ぁ!」

とその男は俺の姿を見つけニヤニヤしながら挨拶してきた。

「…おはよう」

挨拶を返してプイッとそっぽを向いた俺に、立ち上がったその男同僚の菊池は、コーヒーサーバーでカップにコーヒーを注ぐと手にしたカップを一つ俺に差し出した。

「…ありがとう」

そらしかけた視界に、逃がすものかといわんばかりに菊池はぐいっと空いた手で俺の腕を掴んだ。

「なぁ、水臭いぞ沖田。
こんなにずーっと長い間俺たち外科や栄養科が応援してきたんだ。
お前には俺たちに報告する義務があるはずだ。

俺たちはお前の口からはっきり聞きたい。
なぁ?みんな」

菊池が俺の背後に目を向けたので、振り向いて医局の入り口に目を向けると、こちらの様子をチラチラ盗み見る看護師たちや看護師長と目が合った。

(はぁぁ、しかたないか)

「昨夜、医院長に声をかけられ病院経営者が集まる懇親会に出席した」

菊池をちらりと見ると、にこにこしながら

「うん、俺も出席した。それに…。うちの病院からは内科の風見先生と麻酔科の立花先生、小児科の蓮見先生もみんな "一人" で参加してたよね?」


にやりと笑う菊池の言葉に、俺は顔をしかめ心の中で盛大に舌打ちした。

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