【電子書籍化】悪役令嬢は破滅回避のため幼女になります!
(落ち着くためにも状況を整理しないと。まずはあの婚約者候補、アレン様よ)

 アレンはこのゲームのメインヒーロー。王子ではあるけれど、上に優秀な兄がいるため王位を継ぐことはない。そのため魔法の腕を磨き、兄の力になることを願って学園での勉強に励んでいる。
 誰にでも人当たりの良いアレンは学園で主人公と出会い友として、いつしか互いに惹かれあうようになる。しかし彼の不運は我が儘でプライド高い婚約者候補が同時期に学園に通っていたことだ。
 当然、イリーナにとって主人公の存在は受け入れられるものではなかった。学園で一番の成績を収めればアレンの婚約者になれるというイリーナの夢は主人公の存在によって危ぶまれてしまう。
 アレンにとって特別な女の子。自分より優れた魔女。いずれにしても後のないイリーナは主人公に辛く当たる。嫌味を言うのは当たり前、授業の妨害に、罠にはめようとさえした。
 自分の成績が一番になれないのは主人公のせい。主人公がいなくなればアレンの関心も取り戻せると考えるようになる。

(最初から向けられていた心なんてなかったのに。本当、哀れだって言いたくなるよね)

 主人公ライラは百年に一人しか現れないと言われる精霊の愛し子。幼い頃、森で迷った主人公はファルマンと出会い祝福を受け、加護を与えられている。精霊の声が聞こえる特別な存在。魔法の力は増し、才能に溢れ、素直で誰からも愛される優しい子。それが主人公だ。

(そんな子、普通に相手にしたって勝てるわけがないのに)

 嫉妬に駆られたイリーナはどのルートでもファルマンの策略にはまり、主人公を排除しようとする。その結果、無茶な魔法に手を染めたイリーナは主人公たちの障害となった。
 国を亡ぼす危険な魔法、呪いと呼ばれる禁術にさえ手を染めたイリーナは、制御出来ずに魔法に呑まれてしまう。そこで力を合わせて暴走する魔法を食い止めるのが主人公と攻略対象というわけだ。

(邪魔者の消えた世界で二人は幸せに暮らすけど、その時イリーナは……)

 力量以上の魔法を使って無事ではいられない。帰らぬ人になることはもちろん、消滅、消失、あるいは心を失う。

『哀れだな。イリーナ』

 アレンの声で再生されるそれは消えゆくイリーナに向けられた最期の言葉だった。

「そんなの嫌! 私は破滅したくない!」

 一刻も早く婚約者候補を辞退させてほしい。あれが婚約者候補と言われても、これからまともに会話出来る自信がない。

「ならアレン様の婚約者を辞退すれば?」

 イリーナが悪役令嬢と化す元凶だ。しかし現状婚約者に内定しているわけでもなく、あくまでも候補であるため辞退もない。
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