【電子書籍化】悪役令嬢は破滅回避のため幼女になります!
イリーナは扉の隙間からエントランスへと駆け込む。ところがマリスが追いかけてくるのは予想外だった。
(なんでついてくるの!?)
大人しそうに見えて動きは俊敏らしい。イリーナは追いつかれまいと夢中で目の前に見えた階段へと向かう。ここさえ登りきればその先にあるのは家族だけのプライベートなエリアだ。
しかしイリーナの前に表れた人物は、立ちはだかるように進路を阻む。
「こんにちは。イリーナ」
「リオット・ファミール様……」
イリーナは自分を邪魔する男の名を呼んだ。
一つ年上の公爵令息リオットは夕暮れのような美しい空の色を宿した髪が似合う人で、黙っていれば文句なしの美人だが、言葉には皮肉が多いため会話は要注意とされている。
「誕生日おめでとー。ところであいつがいないみたいなんだけど。君知らない?」
話しかけながらもイリーナにはまるで興味がないと言いたげだ。
リオットがあいつと呼ぶのはアレンのことで、彼は従兄弟であるアレンをライバル視している。そのため婚約者候補であるイリーナにも好意的とは言い難く、友達でもない相手の誕生日パーティーに参加しているのはアレンがいるからだろう。ゲームでもなにかとアレンに張り合い挑発することが多かった。
人の誕生日パーティーで喧嘩は止めてほしいが、早くアレンは中庭にいると教えて道を譲ってもらおう。
「アレン様なら」
「探したよ。イリーナ」
アレンが中庭から戻ってきたようだ。
(なんでこのタイミングで戻ってくるかなあ!?)
リオットがにやりと唇を釣り上げるのがわかった。小競り合いに巻き込まれるのはごめんだ。
「やあアレン。元気そうだね」
「リオットか」
リオットの登場に、アレンはいかにも面倒くさいという反応を示す。呆れているようでもあった。
それが癇に障ったのか、リオットは嫌味たっぷりに反論した。間にイリーナを挟んだままで。
「王子殿下は随分と忙しいんですねー。俺からの誘いを断ってまで、わざわざ婚約者候補殿の誕生日パーティーに参加されているんですから」
候補の部分をやけに強調するのは嫌味のつもりだろう。アレンの返答にはため息が交じっていた。
「大切な人の生まれた日だ。祝いに駆けつけるのは当然だろう」
これで今日、アレンがここにいることへの説明がつく。リオットは定期的にアレンに挑戦を挑んでは負けるという状態で、今日も勝負を挑んでいたのだろう。イリーナの誕生日は体のいいリオット避けに使われたというわけだ。別にいいけれど。
ならばあとは二人で存分にと、マークの外れたイリーナはドレスの裾を持ち上げて彼らの間をすり抜ける。
(なんでついてくるの!?)
大人しそうに見えて動きは俊敏らしい。イリーナは追いつかれまいと夢中で目の前に見えた階段へと向かう。ここさえ登りきればその先にあるのは家族だけのプライベートなエリアだ。
しかしイリーナの前に表れた人物は、立ちはだかるように進路を阻む。
「こんにちは。イリーナ」
「リオット・ファミール様……」
イリーナは自分を邪魔する男の名を呼んだ。
一つ年上の公爵令息リオットは夕暮れのような美しい空の色を宿した髪が似合う人で、黙っていれば文句なしの美人だが、言葉には皮肉が多いため会話は要注意とされている。
「誕生日おめでとー。ところであいつがいないみたいなんだけど。君知らない?」
話しかけながらもイリーナにはまるで興味がないと言いたげだ。
リオットがあいつと呼ぶのはアレンのことで、彼は従兄弟であるアレンをライバル視している。そのため婚約者候補であるイリーナにも好意的とは言い難く、友達でもない相手の誕生日パーティーに参加しているのはアレンがいるからだろう。ゲームでもなにかとアレンに張り合い挑発することが多かった。
人の誕生日パーティーで喧嘩は止めてほしいが、早くアレンは中庭にいると教えて道を譲ってもらおう。
「アレン様なら」
「探したよ。イリーナ」
アレンが中庭から戻ってきたようだ。
(なんでこのタイミングで戻ってくるかなあ!?)
リオットがにやりと唇を釣り上げるのがわかった。小競り合いに巻き込まれるのはごめんだ。
「やあアレン。元気そうだね」
「リオットか」
リオットの登場に、アレンはいかにも面倒くさいという反応を示す。呆れているようでもあった。
それが癇に障ったのか、リオットは嫌味たっぷりに反論した。間にイリーナを挟んだままで。
「王子殿下は随分と忙しいんですねー。俺からの誘いを断ってまで、わざわざ婚約者候補殿の誕生日パーティーに参加されているんですから」
候補の部分をやけに強調するのは嫌味のつもりだろう。アレンの返答にはため息が交じっていた。
「大切な人の生まれた日だ。祝いに駆けつけるのは当然だろう」
これで今日、アレンがここにいることへの説明がつく。リオットは定期的にアレンに挑戦を挑んでは負けるという状態で、今日も勝負を挑んでいたのだろう。イリーナの誕生日は体のいいリオット避けに使われたというわけだ。別にいいけれど。
ならばあとは二人で存分にと、マークの外れたイリーナはドレスの裾を持ち上げて彼らの間をすり抜ける。