５月３１日 朝の話
夢
見知らぬ街の見知らぬ駅
真っ黒な煙を吐きながら俺の目の前に停止する車輪のない汽車。

乗員も乗客も誰もいない。ガラガラと大きな音を立て汽車のドアは開いた。


「こっちにおいでよ」


聞き覚えのある女性の声が僕を呼んでいる。

僕は吸い込まれるように足を動かしていた。

その瞬間汽車の床がトランポリンのように柔らかくなりその場に立っていられなくなった。

フワリと浮く身体。
しばらく宙をさ迷った後
いつしか誰かの暖かい腕に包まれていた。

その腕は暖かく懐かしい感触がした。
その腕に抱かれていると心が落ち着いた。
抱きしめられていた腕が解かれ僕は急に不安になった。

半分睡眠半分覚醒の狭間で彷徨い頭の中で声にならない言葉を発した。

『行かないで！』

苦悩に歪んだ顔、目から涙が溢れていた。


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