リアル
たまに立ち寄る屋台に三人で来た。


「あれ?こんな時間にくるなんて珍しいねぇ。」


気さくな感じで屋台のオヤジが言った。

最近は席に着くと勝手にビールが出てくる。


「はいッいつものビールね。」


日本酒の香りをさせながらオヤジがジョッキを置いた。


「店、二人も抜けちゃって大丈夫ですか?」


屋台のカウンターで、アタシと茜の真ん中に座る杉田純一に聞いた。


「平日だし残ったメンバーで何とかなるさ。」


いつもより更にハスキーな声で杉田純一が言う。


暫くの沈黙が続いた。


・・・『乾杯』はない。


誰ともなく勝手にビールに口をつけた。

「茜、何があったんだ?ちゃんと俺に話してくれないか?店の中でのモメ事は困るよ。」


茜は黙っている。


沈黙は苦手だ。


沈黙になると煙草を吸って間をとるのが癖だ。


だからアタシは煙草に火を着けた。


屋台のおでんの湯気と煙草の煙りが混ざっている。


アタシはその湯気と煙りを見つめながらひたすらに沈黙に耐えた。


「茜、黙っていては話しが進まないだろ?」


静かな声の杉田純一。


茜がようやく口を開いた。



「そんなに店内のモメ事が嫌ならあたしを抱いてよ。そしたらもぅ真実に関わるのはやめるから。」

真っ直ぐな茜の瞳。

...



< 138 / 210 >

この作品をシェア

pagetop