リアル

また、杉田純一がグラスの酒に口をつけた。


これで何杯目だろう．．．。


気がつくと、アタシも血液がアルコールに変わっていた。


「．．．俺はね、世界一母を愛していて、そして、世界一母が憎いんだ。」


「．．．？」


アタシはタバコの煙りを吐きながら杉田純一の言葉の意味を考えた。


けれど、アタシにはよく理解出来ない言葉だった。


「茜ちゃんの事は愛おしいと思う。けれど抱けないんだよ。」


「．．．？何故ですか？愛おしいって事は好きって事じゃないですか？！」


ｶﾀﾝッと強くビールグラスを置いた。


「母と重ねてしまってね．．．。愛おしい．．．、けれど汚らわしい．．．。」

「はぁ？！大分意味分からないんですけど！！汚らわしいってアタシ達の商売の事を言ってるんですよね？！」


アタシの眉間のシワは深く刻まれた。


「変な意味じゃないんだ。さっき麻波ちゃんが言った通り俺はマザコンなのかもしれない．．．。」

「素で怒りますよ？さっきからオーナーの言っている事に腹が立つんですけど！！」


ハラワタが煮えくり返りそうだ。


「麻波ちゃん、ごめんね。俺は茜ちゃんの事はとても好きだと思う。けれど、愛せない。愛しているけど愛せないんだ。」


「．．．アタシには理解できません。」