リアル
『ジュン』はあまりアタシの事を聞かない。


だからアタシも『ジュン』の事をあまり聞かなかった。


他愛もない会話。


それでもアタシは『ジュン』と話しているだけで楽しかった。


「茜ちゃんって一緒にいて楽しいから友達とか沢山いそうだよね。」


アタシはドキッとした。


一瞬頭の中に遥と麻波の顔が浮かんだ。

「...今、上手く言えないけど離れてしまった友達がいるんです...」


「どうして離れてしまったの?」


「アタシが突き放してしまいました。アタシだって悪いのに...今心の中にその友人の顔が浮かびました。」


『ジュン』はグラスの中のビールをグィっと飲み干すと、


「その友人だって今頃、茜ちゃんの事を考えていると思うよ。強い友情なら少しの亀裂くらいすぐ直るよ。」


そぅ言うと『ジュン』は冷蔵庫の中からワインを取り出して来た。


ペトリュスと書いてあった。


アタシにはよく分からない名前だった。

「さっき何でもって言っていたけどワインは平気?」


「はぃ。平気です。」


ワイン....アタシ飲んだ事無いんだよね。


いつもの仲間で飲むお酒は缶ビールか焼酎だし。


< 75 / 210 >

この作品をシェア

pagetop