巡り行く季節の中心から【連載中】



普段通りの授業を終え、大勢の生徒が下校する放課後。
校門を出てしばらく歩いてから習字セットを置き忘れたことに気付いた私は、慌ててUターンした。
夕方に習字教室があるからちゃんと持って帰らないといけないのに。
うっかりしていた自分に、心の中でげんこつを入れる。

学校に戻ってきたものの、元々掃除当番で帰りが遅くなってしまったせいか、靴箱のなかのほとんどは上履きになっていて、案の定廊下にも人の姿が無かった。

途中隣のクラスの先生とすれ違った時に、早く帰ることを促されたので、怒られない程度に早足になる。
教室の前に着いてドアを開こうとした瞬間、加速していた心臓の動きが止まってしまいそうになった。


「あいつマジ根暗だわ。友達いないから小説ばっか読んでんのー」


僅かな隙間から聞こえた、耳を疑いたくなるような凛ちゃんの声。
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