巡り行く季節の中心から【連載中】
「ったぁ……。ちょっと何するの!?」
「凛ちゃん、あなた最低だね」


凛ちゃんは頬を手で覆いながらキツい視線をよこしてくる。
にも関わらずこの時既に吹っ切れていたのか、私は思いの外冷静でいられた。

凛ちゃんの吊り目がちな双眸に映った自分は、酷く冷淡な顔をしている。
どうしてこんな仕打ちを受けることになっちゃったのかな。
凛ちゃんのこと、信じてたのに。
私がいつどこで何をしたっていうの?
神様の気に触れるようなことをしましたか?


「最低なのはどっちだよ!ビンタするとかあり得ない!」
「凛大丈夫?」
「マジウザいし。さっさと帰れよ!」


浴びせられる罵声を背に、習字セットを手に駆け出す。
涙を堪えたまま校門を飛び出して、人通りの少ない路地に入ってから足を止めて、その場でしばらく静かに泣いた。
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