穂先輩が甘々すぎる。
「いや、全然。車両降りる時に、スクバから定期落ちたのが見えたから。見つかってよかったな。」
「はい。おかげさまで…。」
話している感じを聞いていると、目の前の人は落ち着いた雰囲気の人で…クールっぽい。
この人はもしかして今日、偶然同じ車両に乗っていたのだろうか。
本当に、運が良かったと思う。
そして私の落とし物を見つけてくれた彼は、恩人であり仏様だと思ってしまった。
それくらい、大事なものを見つけてくれたから。
「駅、あんなに混んでたのに走ってっちゃったから、びっくりした。」
うっ…。
そりゃ、そうだよね…。
また私…人のことを不快にさせてしまった…よね。
「ご、ごめんなさい…。」
「ん?別に気にしてないけど。」
再び頭を下げて謝ったけど、頭上から返ってきた言葉は思いの外あっさりしていて。
彼の言葉通り、本当に気にしていなさそうな気持ちが伝わってきた。