穂先輩が甘々すぎる。

無事に穂先輩らしき人物と会うことなく図書室まで辿り着き、安堵で胸を撫で下ろす。


そして図書室の扉を開け、奥の一番隅っこの席まで歩き進み、腰を下ろした。


今日は図書室に生徒は誰もいなくて、司書の先生だけが受付の奥の事務室のようなところで仕事をしていた。


スクバを自分の座る隣の椅子にどさりと置いて、教材を取り出す。


ふぅ…。


あまり乗り気ではないし、きっと今日も勉強どころではないだろうと思ったけれど。


渋々、参考書を開いて勉強を始めようと思ったその時。



「…ほたる。」


「きゃっ！…えっ？」



いきなり横から名前を呼ばれて、ビクッと肩を震わせた私。


ここが図書室なのにも関わらず、声を上げてしまったことを後悔した。


けれど生徒は他に誰もいなくて、奥の部屋にいる司書の先生も特にこちらに気づいた様子はないことが不幸中の幸いだった。