穂先輩が甘々すぎる。
私、気に入ってるって…言われたよね。
一体、どういうことなの。
穂先輩の考えていることが全然わからないよ。
「早く行こーぜ。」
「きゃっ…」
この状況を整理したいのに、そんな暇もなく。
穂先輩に腕を引っ張られて、そのまま先輩について歩く。
クラスのみんなや廊下にいた人たちの私たちに向けられた賑やかな声が、遠ざかっていく。
ああ…私のことなんて、みんなちっとも知らないのに。
明日から、変に注目を浴びそうでこわいよ。
腕を引かれたまま、数歩先を歩く穂先輩の背中を見つめた。
みんなのあの黄色い悲鳴…。
この人は、只者ではなさそう。
「あのっ!先輩は…有名人ですか…?」
会話が苦手な私だけど、無意識で疑問を先輩に投げかけた。
穂先輩の広い背中がぴくりと反応する。