穂先輩が甘々すぎる。



「あっ…あの、先輩。」


「ん?」



ローファーに履き替えた穂先輩は、私を見下ろしながら首を傾げてそのまま歩き出してしまった。


ああ、待って待って…!


私は穂先輩の背中を見つめながら、すぅっと息を吐いた。



「わ、私実は今日、友達と帰る約束が…!」



なんて、口から出まかせで嘘をついたことを、数秒後に後悔した。


穂先輩がぴたりと足を止め振り返り、かがんで私の顔を覗きこんだ。



「…へえ?」


「…っ!」



なにかに気づいているように、片側の口角だけを上げている先輩に、私は息を呑んだ。



「ごめんほたる。嘘ついてんのバレバレ。」


「へっ…?」



ど、どうして嘘だってわかったの…?


ちょっと呆れを含んだ笑みを浮かべた穂先輩に、私は気まずくて視線を泳がせた。



「ほたるさ。まだ今のクラス馴染めてないだろ。」


「なっ…」


< 23 / 136 >

この作品をシェア

pagetop