穂先輩が甘々すぎる。
「あっ…あの、先輩。」
「ん?」
ローファーに履き替えた穂先輩は、私を見下ろしながら首を傾げてそのまま歩き出してしまった。
ああ、待って待って…!
私は穂先輩の背中を見つめながら、すぅっと息を吐いた。
「わ、私実は今日、友達と帰る約束が…!」
なんて、口から出まかせで嘘をついたことを、数秒後に後悔した。
穂先輩がぴたりと足を止め振り返り、かがんで私の顔を覗きこんだ。
「…へえ?」
「…っ!」
なにかに気づいているように、片側の口角だけを上げている先輩に、私は息を呑んだ。
「ごめんほたる。嘘ついてんのバレバレ。」
「へっ…?」
ど、どうして嘘だってわかったの…?
ちょっと呆れを含んだ笑みを浮かべた穂先輩に、私は気まずくて視線を泳がせた。
「ほたるさ。まだ今のクラス馴染めてないだろ。」
「なっ…」