穂先輩が甘々すぎる。
『次は、××駅___…××駅____…』
あ、私の降りる駅だ。
そろそろだと思ったんだ。
車内にこもっている熱が息苦しくて。
早く、外の空気が吸いたい。
アナウンスのあとに、車両が少しずつ走るスピードを緩める。
そして、車内の人間全員がカクン、と同じ方向へ一瞬傾いて、電車が止まったことを認識した。
プシューー…という音と共に開かれる扉。
そして一斉に車内を降りる人々。
私は、その人混みに埋まったまま、半ば流れるように足を進めた。
まだ人は密集しているけどやっと外の空気が吸えたことで、息苦しさから解放される。
あ、そうだ…定期を出しておかないと。
パスケースを取り出すために、スクバのポケットに手を突っ込む。
…あれ?
いつもここのポケットに入れているはずの定期が…ない。
さっき改札をくぐったとき、たしかにここにきちんと入れたはずなのに…。
もしかして、落としちゃった…?