穂先輩が甘々すぎる。
半年分の定期なのに…やばい…!
大事なものを落としちゃうなんて…私ってばなんてことを…。
血の気がサーっと引いていくのがわかった。
心臓もバクバクいってる、嫌な音だ。
とにかく探しに行かなきゃ…!
人混みの中で踵を返そうとしたその時。
誰かが、後ろから私の右肩をガシッと掴んだ。
「_____なあ。」
「きゃっ…」
さっきとは別の意味で、心臓が音を鳴らした。
肩を掴まれた反動で後ろをばっと振り返ると、黒の学ランが視界に入ってきた。
左胸についている校章は、私のセーラー服の胸元についているものと同じものだ。
「もしかして、これ落とした?」
学ランの胸の前あたりで、彼の手からぷらんとぶら下がっているのは…私の定期が入ったパスケース。
この人が拾ってくれたんだ。
ドクンドクンと波打つ心臓が、なかなか落ち着かない。