穂先輩が甘々すぎる。



声も出ない様子だ。


そしてそれは…私も同じだった。


自分が穂先輩にそう言われてるワケじゃないのはわかってるんだけど…ちょっとビビりな私は思わず肩がすくんだ。


穂先輩は、完全に怯え切ってしまった3年生もう一度を睨みつけた後、再び私に視線を落とした。


その時には、穂先輩の鋭い表情はすっかり消えて、優しい表情へと戻っていた。


いつもの穂先輩だ。と安堵して、私は肩の力を抜いた。


私のために、あんな風に怒ってくれたんだよね…。



「…行こ。ほたる。」


「は、はい…!」



立ち尽くす3年生を一瞥した穂先輩は、再び足を前に進め私もそれを追いかけた。


そのあとはふたり並んで、無言のまま学校の最寄り駅までの裏道を通っている。


この裏道は人気が少ないから、私たちの足音だけが聞こえる。


ちらりと穂先輩を見上げると、またさっきみたいに眉間に皺を寄せて、ムッとした鋭い表情に戻っていて。


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