穂先輩が甘々すぎる。
わいわいと騒がしい食堂だけど、声のよく通る円華ちゃんに私はちょっと慌てた。
別に円華ちゃんが大きな声を出して穂先輩の名前を呼んだって、特に何があるわけでもないんだけど。
反射的にこの人混みの中、目立ってしまうのでは…と思っちゃったんだ。
けど幸い、いらない心配だったみたいで、とくに注目が集まることはなかった。
けど…ひとり、穂先輩本人だけが円華ちゃんの声に反応したのか、私がいることに気が付いたのか、グループの中心から抜けてこちらへと歩み寄ってくる。
「きゃーっ!ほた、霜月先輩きたよっ!」
「う、うんっ!」
どこか興奮気味の円華ちゃんに背中をとんと押されたのと同時に、穂先輩が私の目の前で足を止め爽やかな笑顔を向けた。
「よ。ほたる。」
「こ、こんにちは…!」
裏庭で出会ったあの日以来、朝と放課後以外に穂先輩に学校で会うことはなかったから変に緊張しちゃう。