穂先輩が甘々すぎる。
みんなの中心にいたその男子生徒は、周りにいる人の1人にそういうと、ずんずんと私の方へ歩み寄ってきた。
そのシルエットは、長身でスタイル抜群に見える。
な、な、なんだろう…。
ランチバッグのファスナーに手をかけたまま、私は硬直した。
そして、こちらに向かってきたその人の履いている上履きの色で、2年生だということがわかった。
上級生…が、なんで私のところへ…?
「…お前、朝の子だよな。パスケースの。」
「…あ…!」
「ふうん。1年生か。」
そっか、この人が私の落とし物を拾ってくれた恩人なんだ…!
私は慌ててランチバッグをベンチに置いて、立ち上がる。
「あ、あの、朝は助かりました…!本当にありがとうございました…!」
人見知りゆえ、目を合わせて話すことが苦手な私は深々と頭を下げたまま、お礼を述べた。