腹黒策士が夢見鳥を籠絡するまでの7日間【番外編② 2021.5.19 UP】


 でも、やっぱりまだ娘を嫁に出すには早かったかもしれない。
 募る寂しさに、そんな後悔も残る。

 思わず、

「あげは。ほ、ほら、どうしても大変だったらうちに戻ってきていいんだぞ?」

と言ってみる。
 娘は少し困ったように、

「え、お父さん? 大丈夫だよ、私は……ほら、ああ見えて須藤先生、優しいし」

と言う。

 なんてけなげでいい子なんだ。あげは!


「本当か? 本当に大丈夫か⁉」

「うん。たぶん、そのうち、きっと、いつか……須藤先生も落ち着くと思うし……」


 一体、『何』が『落ち着く』と言うのだ。
 娘も相当毒されている……。



 しかも、男同士の勘だが、須藤くんの独占欲はきっとこれからも変わらない。
 なんならもっと酷くなるかもしれない。

 子どもなんてできた日には……どうなるのか。
 孫はかわいいだろうけど、純粋にいつまでも娘のことは心配なのだ。


 そう思い鼻の奥がツンとなる。
 あんな腹黒い人間に対しても、健気でかわいい娘の姿を見ていたら、また泣きそうになった。

 昔から、どんな相手にも優しい娘だからこそ、
 親としては少し心配なんだ。

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