腹黒策士が夢見鳥を籠絡するまでの7日間【番外編② 2021.5.19 UP】


「もしかして、その田中に、お金貸してって頼まれたの?」

「私が勝手に用意しただけです。田中さんは遠慮する方なので頼んできません」


 彼は病気の話こそはしたが、遠慮したのか、お金を貸してほしいとは頼んでこなかった。
 でも、遠慮されるような間柄ではないし、困っている人を、ましてや結婚の約束をした相手を放っておけるはずはない。助けるのは当たり前だ。

 私はまっすぐに須藤先生を見た。「だから早くいって渡して安心させてあげないと」



「昔から思ってたけど、あげははバカだよね?」

 さらりと須藤先生が言う。昔から知ってるからって遠慮がない。
 それでも一応私は、須藤先生の上司の娘のはずだ。

 私はむっと眉を寄せた。

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