腹黒策士が夢見鳥を籠絡するまでの7日間【番外編② 2021.5.19 UP】



 大学に行くと、すぐに須藤先生は講義に向かった。
 須藤先生の講義には、三枝先生が補助に入ることもあるが、今日は三枝先生に先ほど急な来客が決まったようだ。

 私が事務作業をしていると、三枝先生が慌てたようにやってくる。


「あの、鳥羽さん。少しお願いしてもいいですか」

「はい、もちろん」

「今日私がこれを持っていくお約束をしてたのに忘れてしまっていて。これ、講義室持って行って渡してくださいませんか」

そう言って渡されたのはコピー済みの講義資料だった。


「いいですよ。どこですか?」

「理学部講義棟東1です」

「はい。急いでいってきますね」


 私が言うと、ありがとうございます、と頭を下げて、三枝先生は打ち合わせ室に慌てて入っていった。

 あれ? 父は今長期出張中。
 三枝先生が頼んでくるということは、須藤先生の講義か。

 なんとなく朝のやり取りから恥ずかしくて顔を合わせにくい。
 でも、そうも言っていられないので、私は急いで講義室に走っていった。


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