狼男 無限自殺 編
第1話
「一緒に死にますか・・?」
僕達が出会ったのは、お互いがそれぞれ自分の命を終わらせようと訪れた・・
校舎の屋上だった。
“先客”として、僕が辿り着いた頃には既に・・彼女は空中へ残り一歩の縁に立っていた。
「・・・1年生・・・?」
「・・・・・・・・・・。」
涙と涙が合った後、彼女はゆっくり頷いた。
どの学校にも、最低“3人”はいる。
もちろんもう少し細かく見れば10人でも20人でもいるかもしれない。
でも、絶対3人は居るうちの・・・
僕が2年生代表で、
彼女が1年生代表のようだった。
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
彼女の隣に立って、僕も空中まであと一歩の・・“生死”の境界線に身を置く。
“どうしてイジメられるようになったの?”
“どんな事をされたの?”
“先生は助けてくれなかったの?”
“親にはやっぱり言えないよね・・”
初対面だけど、何も会話を交わさなかった。
わざわざ教えてもらわなくても・・
“自分”に置き換えて考えればいいだけだから、“知らなくても”知ってた。
「遺書は書いてきた・・・?」
「・・一人残らず名前書いておきました。
見て見ぬフリした子も、
先生の名前も・・。」
「僕は何も書かなかった。」
「どうしてですか・・・?」
「お父さんを苦しめたくない・・。」
「・・・・・・・・・。」
「僕のイジメは【苗字】がキッカケだから・・お父さんのせいにしたくない・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
会話はここで終わった。
その後はお互い無言で、
夜風だけが鼓膜を揺らす。
お互い無言のまま・・
お互い最後の一歩は踏み出さずにいた。
弱くて、何も言い返せなくて、
怖くて、誰にも相談できなくて、
逃げたくて・・逃げたくて・・・。
僕達は天国に行きたいんじゃない・・。
今居る地獄から抜け出したいだけ・・。
「・・一緒に逃げる・・・?」
「え・・・・・。」
何分経ったかも分からない。何故そんな言葉が口から出たのかも分からない。
だけど僕は・・何分前かに“一緒に死にますか?”と聞いてきた涙に対して、
何分後かに“一緒に逃げる?”と涙で返した。
「どうせ死ぬなら・・
逃げて逃げて・・
逃げ終わってから・・
死のうかなって・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
“生死”を分ける境界線から一歩・・二歩三歩四歩・・お互い離れて校舎の中へと戻った。
“貯金箱を壊す”
“お年玉の貯金を下ろす”
“親の財布から盗る”
待ち合わせ場所と時間だけ決めて、僕達はひとまず“あと1日”生きる事に決めた。
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