狼男 無限自殺 編
「・・・・・・・・・。」
もし、まるい探偵事務所で働き出す前の私だったら、
二度と戻れないあの頃の想い出に“哀”の感情が埋め尽くして、
そもそも“たこ焼き屋さんに並ぶ”という行為すらきっとしなかった。
でも今は・・もちろん哀しさはあるけど、
でも久しぶりに・・あの頃の想い出に浸れる“喜”の感情が僅かに上回っている。
決して私の心の中で消えない存在。
もう二度と会えないけど、
でもいつでも会える心の拠り所。
たかがたこ焼き。
1000円以内で済む食べ物。
でも・・その一つ一つが、
私の大切な想い出・・。
「小松。」
「あ・・お帰りなさい。」
「なんで大して行列進んでないんだよ。」
「・・・なんだか前にもこういう会話しましたよね。」
「行程変更だ。」
「・・・?」
「ユカリから“ライスバーガー食べたい”って連絡来たからモス行くぞ。」
「え!!?」
「阿呆。大きい声出すな。」
「・・・・・・・・・・・。」
「なんだよ?」
「私はたこ焼き食べたいです!!」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「あ・・も、もちろん自腹で・・・。」
「好きにしろ阿呆。」
「・・・あ・・・・。」
断る間もなく、千円札を2枚手渡してきた藪さんに・・
てりたまとチーズ明太子のどっちにするか迷っていた私に、
“両方買え”と無言のメッセージを送ってモスバーガーへ向かった藪さんの後ろ姿を見て、
すぐにまた“嬉 涙”の感情が出そうになったので慌てて引っ込めた。
第1話 完