狼男  無限自殺 編


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


!?また場面が変わった・・・。


“バイクの後ろ”の光景は変わらずだが・・止まってる?


綾野は横断歩道の手前の、ちょっとした駐車スペースにバイクを停めているようだった。



「・・・・・・・?」


なんとなく・・空を見上げると・・。

さっきまでは太陽が爛々と射していたが、
今は落ちかけている。


真っ昼間⇒15時頃?に時間が進んだと直感で感じ取る。



「綾野。バーカバーカ。塩顔バーカ。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


何を言っても・・
俺の声はやっぱり聞こえない・・。




“キャッキャ!!”

“あ~みんなほら!
綾野のお兄ちゃんが居るよ~!”

“キャッキャ!!”



・・・・・?

しばらくすると・・向こうから大人の女性が数人と・・小さな子供達が歩いてくる。


「「「「あやのおにいちゃん、
こんにちは~~!!」」」」


「うん。こんにちは。」



!!!!!!!!!?
綾野が喋った!!?


こんな時になんだが・・ハイジが、
[立った・・クララが立った!]

と叫んだあの名作アニメのシーンと、
今の自分の心境が重なる。


「はいみんな手を挙げて渡るよ~!」
「「「「「「はぁ~い!!」」」」」


大人の女性の掛け声に合わせて、

可愛らしいお揃いの制服を来た小さな子供達が手を挙げて横断歩道を渡る。


それを・・綾野がいつも通りの優しい眼差しで見守る。


そうか・・恐らく近所の幼稚園に通う子供達の帰りか・・。


信号が付いているとは言え、
多少の車通りもある。


全員が渡りきったのを見届けると、
手を振る子供達に手を振り返しながら、

再び白バイが発進する。


先生や子供達が親しみを込めて名前を呼んでいた様子を見るに、

きっと綾野のルーティンなんだろう。


彼は毎日こうして・・
子供達の安全を見守っているんだ。






「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」


少し進んだ後、また違う横断歩道の近くで綾野がブレーキを掛けた。


今度は黄色い帽子を被って、

黒色や赤色・・それぞれのランドセルを背負った子供達の集団が現れる。


「「「さようなら~!」」」


「気をつけて帰るんだよ。」


幼稚園生と違って律儀に手は挙げないが、

小学生達は嬉しそうに綾野へ手を振って横断歩道を渡る。


こっちは近隣小学校の通学路ってところか・・。


1年生~6年生。

身長や体格からの推測だけど、

ほとんどの生徒が下校するまで、
綾野は静かにその様子を見守っていた。










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