狼男 無限自殺 編
「・・・・・・・・。」
ハンドルのすぐ下に付いている速度メーターで計測を開始して・・
バッチリ証拠を押さえた後、
“プォーーーーーン”
「ベンツの運転手さん。左に寄ってゆっくりスピードを落として停車お願いします。」
サイレンを鳴らして、
“ネズミ捕り”が成功する。
こんなにも手際よく捕まえられるんだ。
そもそも綾野がいつものように堂々とパトロールしていたら、
このベンツさんだって安全を意識して走行していたんだ。
ベンツの後ろに白バイを停めた綾野が運転席へと寄って、ドライバーに説明して、
駄々をこねられながら、
見苦しい言い訳を聞かされながら、
穏やかに・・
でも毅然として反則切符を切る。
綾野のその表情は言うまでもなく、
“納得していない”ようだったけど・・。
逆にベンツの運転手は渋々納得して反省の弁を述べて、またゆっくりと走り出した。
「綾野。納得できない気持ちはよく分かる。
・・大丈夫だ。君の正義は必ず俺と椿刑事部長が証明するから。」
綾野が戻ってきて、書類の確認と他にも何やら必要事項を書き込む。
もはや声が届いてほしいというより、
こうやって声を発さないと俺も発散できないから言葉を発した。
もし失声症の原因が・・
あのパワハラ野郎共や、押しつけられた“誤った正義”にあるんだったら、
俺や椿刑事部長がどんな手を使っても君の声を取り戻す・・。