狼男  無限自殺 編


「!!!」
「よし!追いつけるぞ!!」


綾野が対向車線に飛び出して、
運転席側に回り込む。


「止まってください!!
運転手さん!!?」


・・・・!?

2人・・?助手席にも人が・・
女の子が乗っている・・!?


“ぐったり”して目を閉じている女の子と、

涙を流しながら・・何か叫びながら・・明らかに正気を失っている運転席の男の子・・。


窓越しに綾野が必死に制止を呼びかけるが、一向に耳を貸そうとしない・・!?





「!!!?」
「なっ・・・!?」


いつの間にか・・・たった1日しか付き合っていないけど・・

【見覚えのある】横断歩道が見えてきた。


たった1日しか顔を見ていないけど・・

【見覚えのある】女性数人と・・小さな子供達が手を挙げて渡っている・・!!




「止まれ!!!!!!!!!!
止まってくれ!!!!!!!!!!!」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・


・・その技術に驚嘆する暇も無く・・

浮遊霊のような存在の俺が何か手助けできるワケも無く・・


急に全てがスローモーションと化した。



軽トラの運転席側にビタ付けして必死に叫ぶ綾野・・。止まらない運転手・・・。


右手左手・・両手ともハンドルから離して、

“立ち漕ぎ”のように座席から腰を浮かして立ち上がった綾野・・・。



腰から警棒を取りだして・・俺達警察官しか知らない“その使い方”、“開け方”で・・

“パリンッ”と音が鳴り、
一瞬にして割れる運転席の窓。


「!!!!!!!」


凄まじい脚力で白バイを蹴り飛ばして、操作を失ったその車体を地面に滑らせて転倒させる。


それと同時に運転席の窓に飛び移って、

車体にしがみついて・・
ハンドルを無理矢理左に切る綾野・・。




奇跡だったのか、それとも毎日ここを訪れる綾野の本能がそう判断させたのか、


急ハンドルが切られて道路を外れた軽トラが、

ちょうど空き地のような・・工事現場跡のような無人の敷地へと入っていく。



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