狼男 無限自殺 編
“頼むユウマ、なんとか遺族を納得させてくれ~”
例え名探偵シンイチ君でも、
銀田一少年でも、
あの現場の状況・・何より防犯カメラが映した決定的瞬間から、
自殺以外の結論を出す事は無い。
さて・・・何て言って納得させ・・
“ガタッ”
・・・・?
「・・綾野・・?」
隣に座っていた綾野が立ち上がって・・
席を移動・・?
「・・ウゥゥ・・スッ・・ずみまぜん・・。」
婚約者君の隣へと場所を変えて、
ポケットティッシュを差し出した。
嗚咽と鼻水が止まらなくなった彼の背中をそっとさすりながら、
優しい眼差しで・・号泣を続ける婚約者君の姿を守るように・・
ヒソヒソとこちらに視線を送る周りの客にその姿が晒されなように、
自分の体をブラインドにした。
「・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
綾野が手帳を取りだして何か書き込むと、俺に見せてくる。
〔もう少しだけ、
この方の話を聞きましょう。〕
「・・・・・・・・・・・・。」
“分かった”と小さく頷く。
・・・・・もちろん、
綾野も自殺だと分かっている。
だけど・・“納得させようと”していた俺に対して、
綾野はとことん“気持ちを吐露させてあげよう”と考えたに違いない。
「・・・・・・・・・・・。」
「・・。」
呼び出しボタンを押して、
店員のお姉さんにコーヒーを3つ注文した。
彼の嗚咽が止んで、また始まって・・
その繰り返しを綾野と2人でずっと・・
コーヒーが到着しても、冷めても、
周りに居る客が何回転しても・・
ミレイさんと婚約者君が歩んできたこれまでの道に耳を傾けた。