DIYで魔法世界を再建!
第二十九章 新たなる住民の気配
「・・・ん?」
林の拡張作業中。また荒地の向こうから、人がこっちに向かって歩いて来ている。私がお手製の旗を振ると・・・
「・・・??」
いつもなら駆け寄って来てくれる筈なのに、今回に限っては違った。その人は、私の旗を目にした瞬間、立ち止まったのだ。
シナノ様から聞いたけど、荒地では立っているだけでも息が苦しくなるそう。だからすぐにでも、魔力が豊富な林に飛び込みたい筈。
しかし、その人は何故か林に入る事を『躊躇』している状態。私が荒地に直接行くのはリスクが高い、だから大声で必死に呼びかけるしかない。
「おーい!!! 早くー!!!」
私はその人に向かって大声で呼び続けた、相手の反応があるまで、とにかく呼び続ける事しかできなかった。
ようやく事態が進展したのは、私の声が枯れかけた頃。荒地の向こうにいる人が、やっと決心を決めたのか、ゆっくりとこちらに向かって進み始めた。
そうこうしている間に、もう夕暮れだ。喉も渇いたしお腹も空いた。今日の食事担当はヌエちゃんだった筈。ヌエちゃんの料理の腕前は、日を追う毎に上達している気がする。
最近では、スモビーの実を砕いて捏ねた『スモビーパン』も、主食の一種として樹立できた。ちなみに、『スモビーパン』という名前は私が決めた。
この世界には『パン』という主食がない。だからヌエちゃん達には、「膨らんでパンパンになってるから『パン』」という適当な冗談を混ぜて発案してみたら、割と評判が良かった。
乾燥させてラスク状にすれば日持ちする。持ち運びにも適しているから、林の拡張作業には必ず持ち歩いている。
私は、こちらに向かって歩いて来る人に見えるように、懐に忍ばせておいたスモビーパンを掲げる。すると、相手の歩く速度が明らかに早くなっていた。
・・・あぁ、もしかしたらお腹が空きすぎたから、走りたくても走れないのかもしれない。そう思った私は、無事に林まで到着できた新入りさんにスモビーパンを渡す。
最初はちょっと抵抗していたけど、少し千切って口の中に放り込んだ後はあっという間だった。瞬時に渡したスモビーパンが消えてしまった。
水路の水をグビグビ飲みながら、喉の渇きを懸命に潤す。一体何日間飲まず食わずだったのか。もう荒野の向こうには、食料が殆ど尽きているのかもしれない。今までこの林に迷い込んで来た人達が持っていた食料や物も微々たるものだったけど、この人はそれ以上だった。
持っている物といえば、身体中を覆い隠していたマントくらいだ。マントに隠れて、遠目からでは顔が認知できなかったけど、近くで見ると、その人が『男性』である事が分かった。
左目の方にだけ片面レンズを着けたその姿は、まさしく『学者』だ。その人の体は、とんでもなく軽い。倒れ込んで来ても普通に受け止められる。
普通の男の人なら、私が仰反ってもおかしくないのに、まるで皮膚と骨だけで体が形成されている感覚がして、寒気が走る。言っちゃ悪いけど、完全にミイラだった。
こんな状態でこの状況を生き残れたなんて、『奇跡』としか言えない。その人は体を震わせながら、私の方を見た。
外見は・・・三十代か四十代くらいだろうか。老いている雰囲気ではあるものの、まだ少し若さが見え隠れしている。もしかしたら、私の父よりも年下なのかもしれない。
林の拡張作業中。また荒地の向こうから、人がこっちに向かって歩いて来ている。私がお手製の旗を振ると・・・
「・・・??」
いつもなら駆け寄って来てくれる筈なのに、今回に限っては違った。その人は、私の旗を目にした瞬間、立ち止まったのだ。
シナノ様から聞いたけど、荒地では立っているだけでも息が苦しくなるそう。だからすぐにでも、魔力が豊富な林に飛び込みたい筈。
しかし、その人は何故か林に入る事を『躊躇』している状態。私が荒地に直接行くのはリスクが高い、だから大声で必死に呼びかけるしかない。
「おーい!!! 早くー!!!」
私はその人に向かって大声で呼び続けた、相手の反応があるまで、とにかく呼び続ける事しかできなかった。
ようやく事態が進展したのは、私の声が枯れかけた頃。荒地の向こうにいる人が、やっと決心を決めたのか、ゆっくりとこちらに向かって進み始めた。
そうこうしている間に、もう夕暮れだ。喉も渇いたしお腹も空いた。今日の食事担当はヌエちゃんだった筈。ヌエちゃんの料理の腕前は、日を追う毎に上達している気がする。
最近では、スモビーの実を砕いて捏ねた『スモビーパン』も、主食の一種として樹立できた。ちなみに、『スモビーパン』という名前は私が決めた。
この世界には『パン』という主食がない。だからヌエちゃん達には、「膨らんでパンパンになってるから『パン』」という適当な冗談を混ぜて発案してみたら、割と評判が良かった。
乾燥させてラスク状にすれば日持ちする。持ち運びにも適しているから、林の拡張作業には必ず持ち歩いている。
私は、こちらに向かって歩いて来る人に見えるように、懐に忍ばせておいたスモビーパンを掲げる。すると、相手の歩く速度が明らかに早くなっていた。
・・・あぁ、もしかしたらお腹が空きすぎたから、走りたくても走れないのかもしれない。そう思った私は、無事に林まで到着できた新入りさんにスモビーパンを渡す。
最初はちょっと抵抗していたけど、少し千切って口の中に放り込んだ後はあっという間だった。瞬時に渡したスモビーパンが消えてしまった。
水路の水をグビグビ飲みながら、喉の渇きを懸命に潤す。一体何日間飲まず食わずだったのか。もう荒野の向こうには、食料が殆ど尽きているのかもしれない。今までこの林に迷い込んで来た人達が持っていた食料や物も微々たるものだったけど、この人はそれ以上だった。
持っている物といえば、身体中を覆い隠していたマントくらいだ。マントに隠れて、遠目からでは顔が認知できなかったけど、近くで見ると、その人が『男性』である事が分かった。
左目の方にだけ片面レンズを着けたその姿は、まさしく『学者』だ。その人の体は、とんでもなく軽い。倒れ込んで来ても普通に受け止められる。
普通の男の人なら、私が仰反ってもおかしくないのに、まるで皮膚と骨だけで体が形成されている感覚がして、寒気が走る。言っちゃ悪いけど、完全にミイラだった。
こんな状態でこの状況を生き残れたなんて、『奇跡』としか言えない。その人は体を震わせながら、私の方を見た。
外見は・・・三十代か四十代くらいだろうか。老いている雰囲気ではあるものの、まだ少し若さが見え隠れしている。もしかしたら、私の父よりも年下なのかもしれない。