DIYで魔法世界を再建!
私達は、目の前にいる飢獣から、目が離せなかった。私の悪い予感が、何故か当たってしまったのだ。もう自分の勘を死ぬほど恨みたい程、予想を遥かに上回った。
その飢獣の外見は、『人間』だ。しかし、人間だとしても色々とおかしい部分が山ほどある。
肌はミイラの様に干からび、狼と同じくらい鋭い爪が、両手両足に生えていた。白目を剥き、耳元まで避けた口からは、獣の様な牙が生え揃っている。
その飢獣は、四足歩行で私達ににじり寄ってくる。その姿勢はまさに、獲物を狙う肉食動物、ライオンやヒョウに睨みつけられているのと同じ。
どう見ても、人間と肉食獣を掛け合わせた様な見た目。今すぐにでも剣を向けたいけど、姿形が私達に似ていると、どうしても躊躇してしまう。
しかし当の相手は、相手は完全に人間としての『意識』や『自我』を失なっている事が見ただけで分かる。荒地を彷徨う、獣の姿をした飢獣と、何の変わりもないくらい。
ヌエちゃんは後ろに下がりながら、何度も彼らに声をかけていたけど、その甲斐もなく。人間型の飢獣達は牙を剥きながら私達に飛びついてくる。
でも剣を構えていて助かった。私はすかさず鞘から剣を抜き、そのまま飢獣をブスリと突き刺す。しかしその感触は、空を切る程軽かった。
後から押し寄せる人間型の飢獣に対しても、冷静に対処できた。その一因が、剣の扱いやすさだ。敵を切る感触や手応えを一切感じない。まるでゼリーを包丁で切ったような感覚。
しかも、いくら敵を切り倒しても、剣は一切刃こぼれしない。飢獣を十数匹相手にしたのかも疑いたくなる程、剣は依然として美しいままだった。
唖然とする私の横で、ヌエちゃんとシナノ様は興奮した様子。ヌエちゃんはひたすら私を褒め称え続けるし、シナノ様は私の持っている剣を褒め称え続ける。
正直、手応えがなさすぎて、褒められてもそこまで嬉しくない。逆にこの剣の扱いやすさには、『恐怖』すら感じてしまう。
便利で扱いやすい事に越した事はないけど、あまりにも利便性が良すぎると、逆に不安になってしまう。生前の世界で例えると、『AI』や『SNS』みたいなもの。
・・・そして私達後ろで、シーズさんはついさっき倒した飢獣を調べていた。倒した後にもう一回凝視してみたけど、ソレが明らかに『元・人間』であった事は、覆らないみたいだ。
何故なら骨格から既に動物とは違う。それに、服を着た飢獣なんて今まで見た事がない。だいぶ古びてはいるけど、明らかにシャツやズボンだった。
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