DIYで魔法世界を再建!
「ふぁあ・・・・・」

目が覚めたらまず私がやる事は、近くの小川で顔を洗う事。手製の櫛を手にして。もう小川までは目を瞑っても行ける。それくらいこの地帯に体が慣れた。
道も整備して歩きやすくなったから、転んだり躓いたりする心配もない。まぁ、雑草や小石を退けただけなんだけど。それだけでも十分『道』として成り立っている。
そして小川に片足を突っ込む度に、「冷たっ!」と一言呟く毎日にも、すっかり慣れてしまった。この小川は本当に綺麗だ。底までしっかり見えるから、不意に櫛を落としてもすぐに見つけられる。
その冷たい山水を顔に叩きつけると、全身の鳥肌が一斉に逆立つ。これなら一発で目が覚めるのだ。生きていた頃は、氷を一個口に入れて目を覚ましていたけど。
ブローチでこの小川の水質を確認したら、やっぱり長い間人間の手が及んでいなかった事もあって、飲んでも全然大丈夫な程綺麗だった。
私が生きていた世界でも、そのまま飲める山水は沢山あったけど、逆に飲めない場所の方が多いイメージだった。
おばあちゃんやおじいちゃんがまだ子供だった頃、普通に川の水を飲んでいたエピソードは、現代を生きる私達にとってはありえない話だ。
川の水なんて飲んだら、最悪命が危うくなる可能性だってある。日本はまだいい方だけど、海外では川の水や水道水すら飲めないのだから。
そう思うと、小川の水を飲料水にするのは、ちょっとだけ気が引けた。ただ、今はもうそんな違和感を感じる事なく、グビグビ飲んでいる。
この新鮮な水が、一体何処から流れてくるのかは、精霊さんが教えてくれた。どうやらそこが、この世界に来た私に声をかけてくれた、『水の精霊』の住処なんだとか。
そうなると、私としても強引に住居へ侵入するのは避けたい。それこそ、人が立ち入らないからこそ、保たれる自然なのだから。
安全な水はしっかりと貰っているわけだから、そこまで贅沢も言えない。水は飲水としてではなく、洗濯の水としても活用しているんだから。
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