DIYで魔法世界を再建!
特に、今の様な朝方7時頃には、本土の学校へ向かう学生や、本土に勤める社会人が目立つ。お昼頃になると、本土へ遊びに行くおじちゃん・おばちゃんが多くなる傾向がある。
夕方頃のフェリーが、一番混んでいる。島へ帰る人達が、船の中で本土の魅力やら、近況やらを語っている。私もその一人だけど。
もう船に揺られるのも慣れてしまった。むしろ揺られる船の中で、いかにして自分の体制を維持できるか、ある意味ゲーム感覚だ。
ちなみに、私には妹と弟がいるのだが、弟が一番船に酔いやすい。まだちっちゃい事もあるけど、まぁ乗り続けているうちに慣れる人も多いし、酔い止め用の薬も、港の売店で売られている。
幼稚園の遠足は、ほぼほぼ本土。島にある幼稚園は一つしかないけど、そこにさえ預けておけば、後は安心だ。幼稚園で何かあっても、島に住む人々が助けてくれるからだ。
もうすぐ春休みが来る。そうなると、当然本土へ遊びに行く子供達も増える。『初めてのおつかい』ならぬ、『初めてのフェリー』も、この時期に増える。
天気が良い日、私は決まって甲板で潮風を嗜んでいる。ふと後ろを見ると、小さな男の子がベンチに座り、ガタガタと震えていた。
普通、子供なら船や電車に乗れば、興奮して大はしゃぎする。ただそれは、『親』という名の『味方』がいる時のみ。
その小さな子供は、恐らくこれから本土の小学校へ行く為の『訓練』をしているんだろう。その証拠に、その子の服装はキリッとした、私立小学校の制服だ。
もちろん、『島で生まれ育ったから、島の学校に必ず通わなくちゃいけない』なんて規則はない。家庭の事情だってある。
私の勝手な考えではあるけど、その小さな男の子は、とても賢い子なんだろう。騒いで周りに迷惑をかけないように、しっかりと教育が為されている証拠だ。
私は心の中でその子を応援しながら、近づく本土を眺めていた。今日もいつも通り、大量のカモメがお出迎えしてくれる。
昔はよく見かけていたけど、今はもうカモメにお菓子など与える人もいない。私がま中学生だった時、その理由がどうしても納得できなかったけど、今になると、その理由は『自然』な事である事が理解できた。
最近は、動物が人間に危害を加えるケースも少なくはない。でもその原因というのが、ほぼほぼ『人間側』にあった。
故意がないにしろ、動物に添加物のたっぷり入った食べ物を食べさせて、死なせてしまうケースもある。本当に、本人には悪気なんてない。逆に好意なのだ。
他にも、人間が与える食べ物に慣れてしまって、動物が食べ物を横取りする為に、人間を襲う『習性』を身につけてしまった事も、また悲しい事だ。
自然が生み出してくれる餌がなくなり、仕方なく人間を襲う動物も入れば、なんの恨みもなく動物をいじめる人間。どちらが悪いのかを考えても、圧倒的に『人間側』だ。
ちょっと心苦しい気持ちもするけど、やっぱり自然というのは、遠くから傍観する方が、美しく逞しく感じられるのかもしれない。
昔、私がまだ後ろにいる子供くらい小さかった頃、カモメに自分の食べているおにぎりを食べさせようとして、父に止められた事がある。

「動物が人間の食べ物を食べてしまうとな、その動物が『意地悪』になってしまうんだぞ」

そう言われた。その『意地悪』という言葉の意味が理解できたのは、つい最近なんだけど。
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