DIYで魔法世界を再建!
「ヌエ・・・頼む・・・
 今までお前には苦しい思いを散々させてしまった、その償いにできる事は、もうこれしかない
 のだ・・・」

「お父様ぁ・・・お母様ぁ・・・
 あぁあああ・・・」

3人は、力いっぱい互いを抱きしめる。周りで見ている大人達も、必死で涙を堪えていた。この大人達は、女の子にとっての親戚だろうか?
大人達は、女の子に対して懸命な『償い』をしていた。その心を、まだ幼い女の子が理解できるのかは分からない。ただ、私は大人達が考えている事が、痛いくらい伝わる。
これが、女の子の幸せを願った、最善の策。ただ、それにしてはあまりにも残酷であった。

「さぁ、もう行きなさい!!! そして懸命に生きなさい!!!」

そう言いながら、女の子の両親は、小さな背中を強引に押し込んだ。すると女の子は、吸い込まれる様に隠し通路へ消えて行った。
それを見届けたと同時に、大人達はその隠し通路を、元の壁へと戻した。私の後ろからは、何やら慌ただしい数人の声が聞こえる。異変を察知した兵士達だろうか?
ただ、女の子の両親は、その場から動けない様子。その顔からは、既に感情が消えていた。もう全てをやり切った・・・そんな感情しかない。
その後、女の子の親戚が、様子を伺いに来た兵士を説得していた。「息子が戦場に行ったまま帰って来ず、精神がおかしくなってしまった」と、それっぽい作り話を盾にして。
それを聞いた兵士達は、何の疑いも感じる事なく、その場を去った。・・・もしかしたら、こんな風景が日常茶飯事だから、兵士達も慣れているだけなのかもしれない。
作り話ではあるけど、ある意味『事実』なのかもしれない。何故なら彼らの愛しき娘は、もうこの国に帰って来る事は許されないからだ。
もしこの国から逃げた事が発覚すれば、女の子の両親だけではない、最悪親戚まで『抹殺』されてしまうかも・・・。
この国の事情は詳しく知らないけど、きっとそうだろう。女の子の両親や親戚が、あれだけ必死になっていれば、そうゆう考えも浮かぶ。
この国が、一体後何日持つのか、何ヶ月持つのか、何年持つのか、考えなくても先が見える気がする。
これほど国民が苦しんでいるのなら、国民が全滅するのが先か、国のお偉いさんが全てを投げ出すのが先か・・・
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