年の差政略結婚~お見合い夫婦は滾る愛を感じ合いたい~
PM11時。
いつも私がお風呂からあがるのを寝室で待っている彼が、今日はリビングにいた。
「たまには一緒に飲もうと思って」
そう言って幸景さんはソファーから立ち上がると、キッチンへ行って鮮やかなルビー色のお酒が入ったボトルとグラスをふたつ、それに苺の入ったガラスの器をトレーに載せて持ってきた。
彼が私をお酒にさそうなんて珍しいなと思いながら眺めていると、栓を抜いた瓶からふわりと甘い香りが鼻を掠めた。
「いい匂い……、苺?」
「そう。評判がいいと聞いて取り寄せたんだ。こういうの璃音好きだろう?」
毎晩ワインを嗜む幸景さんと違って、私は滅多にお酒は口にしない。アルコールが苦手というわけではなく、単にワインもカクテルも日本酒も美味しいと思えないのだ。
けど、この苺のワインはまるでジュースみたいな色と香りで好奇心をそそられる。
グラスに注がれたワインは微発砲で、透明なルビー色の液体の中でキラキラと小さな泡が弾けている。
幸景さんは一緒に持ってきた器から苺をひとつつまむと、それを静かにグラスの中に沈めた。
「わあ、可愛い」
目を輝かせる私に彼はシャンパングラスを手渡し、「乾杯」と自分のグラスと触れ合わせる。
ひと口飲むとその口当たりの良さとみずみずしい苺の香りに、「おいしい」と自然と口もとが綻んだ。
「喜んでもらえてよかった」
そんな私を見て、幸景さんが嬉しそうに目を細めた。就寝前のラフな髪型と相まって、端正な顔がとても柔和に見える。
私のためにわざわざワインを取り寄せてくれたことも、甘いお酒が苦手なのに楽しそうに一緒に飲んでくれることも、彼の愛情が伝わって嬉しい。
すっかり上機嫌になった私が笑みを消せないままワインを味わっていると、隣に座る幸景さんがそっと手を伸ばしてきた。
柔らかに頬を包まれ、唇を重ねられる。
ふいうちのキスに目を丸くしている私を見て彼は嬉しそうに口角を上げると、笑顔のまま唇を二度、三度と重ねてきた。
「可愛いね、璃音は。苺のワインよりずっと可愛くて甘くて、食べてしまいたくなる」
囁くような穏やかな口調から、微かに感じる雄の吐息。
触れ合わせるだけだったキスはやがて舌が唇を割り、深く口腔を舐ってくる。飲んだばかりの苺のフレーバーが、彼の舌からも感じられるのがなんだか不思議だった。
「ん……っ、ん、ぁ……んっ」
幸景さんのキスは優しくて、けれどもとっても妖艶。
大きな舌がじっくりと口の中を動き、私の敏感なところを的確にくすぐっていく。
キスをしたままふたりのグラスを器用にテーブルに置き、幸景さんは包み込むように抱きしめてきた。